銅合金のミニ知識
(イ) 銅と銅合金の特徴 銅の特性としては、
- 電気伝導率が銀の次に高く、銀を100として97以上。
- 熱伝導率が高い。銀を100とすれば94。
- 耐蝕性がすぐれている。
- 伸延性、圧延性にすぐれているため、線、条および板加工が容易である。
- 融合性に富み、金、銀、亜鉛、錫、ニッケルなどと容易に融合し、いろいろな合金をつくる。
などが挙げられます。
特に、銅は大気中では極めてすぐれた耐蝕性を発揮します。これは表面に緑青という錆の被膜をつくり、母体金属の酸化を保護するためです。
また、極微量作用といって、僅かの量で驚くほどの殺菌作用があるため、
ドアハンドルや引手などの真鍮金物は衛生上もすぐれています。
(ロ) 銅合金の種類
銅と亜鉛の合金で、別の名を真鍮ともいいます。 亜鉛の含有率が35%のものが一般的で、その他には、銅60%、亜鉛40%のものを 六・四真鍮といい、銅70%、亜鉛30%のものを七・三真鍮と呼んでいます。特に加 工性がよくて美しいため、用途が広く、金物にも多く使用されています。 大別して、プレスや切削などに用いられる伸銅品と鋳物用の黄銅鋳物の2種類があります。 |
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亜鉛、ニッケルに、少量のマンガンを加えた銀白色の合金で、 亜鉛、ニッケルの含有量により数種類に分けられています。耐蝕性にすぐれ、美しいため、 装飾品や食器などに多く使用され、また、弾力性に富むため、楽器や電気材料の部品にも 使用されています。 | |
銅を主成分とした銅とすずの合金です。昔、大砲の砲身がこの 青銅の鋳物で造られていたことから、別名を「砲金」ともいいます。 青銅というから青い色をしているように思われますが、それはさびの色であって、もともと の色は黄色に近い色です。すず青銅、りん青銅、アルミニウム青銅、鉛青銅、シルジン青銅 など多くの種類があります。 |
主な黄銅(真鍮)について表で示します
伸銅品
丹銅 | C2200 C2300 C2400 |
89.0~91.0 84.0~86.0 78.0~81.5 |
以下 0.05 以下 0.05 以下 0.05 以下 |
以下 0.05 以下 0.05 以下 0.05 以下 |
色沢が10~18金に似て美しく展延性・ 絞り加工性・耐食性が優れている。 |
建築用・装身具用 | |
黄銅 | 以下 |
以下 |
銅・亜鉛合金の中で最大の伸長性を 持っているので深絞り用に最適。展延 性・めっき性も良い。 |
時計部品・電球口金・薬きょう | |||
以下 |
以下 |
展延性・絞り加工性・めっき性が良い。
深絞り用 |
ランプケース・カメラ
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以下 |
以下 |
展延性・絞り加工性が良い。 浅絞り用。 |
金属雑貨・型押・抜き物 | ||||
以下 |
以下 |
強度が強く展延性がある。抜打ち・折り 曲げなどの板金加工用。 |
一般板金用・ネームプレート 計器版 |
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黄銅 |
以下 |
特に被削性に優れ、打抜性も良い。 | 時計部品・歯車 | ||||
黄銅 |
以下 |
特に被削性に優れ、打抜性も良い。 | 時計部品・歯車 | ||||
黄銅 |
以下 |
特に打抜性に優れ、被削性も良い。 | 時計部品・歯車 | ||||
黄銅 |
以下 |
特に打抜性に優れ、被削性も良い。 | 時計部品・歯車 |
黄銅鋳物
種類 | JIS記号 | Cu | Zn | Pb | Sn | Al | Fe | 用途 |
1種 | YBsC1 | 83.0~88.0 | 残部 | 0.5以下 | Sn,Al,Feの合計は、1.0以下 | ろう付けしやすいフランジ、 電気部品に用いられる。 |
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2種 | YBsC2 | 65.0~70.0 | 残部 | 0.5~3.0 | 1.0以下 | 0.5以下 | 0.8以下 | 給排水金具、電気部品、 一般機械部品などに用 いられる。 |
3種 | YBsC3 | 60.0~65.0 | 残部 | 0.5~3.0 | 1.0以下 | 0.5以下 | 0.8以下 | 電気部品、建築金物、 一般機械部品などに用 いられる。 |
日本の貨幣の成分表
現在の日本の貨幣は、1円玉がアルミニウムであとはみな銅合金である。
現在使われている貨幣の銅を集めると10万トン以上になるといわれている。
これは1人当りよく1キログラム以上のコインを持っているという計算になる。
500円 (2000年移行発行) |
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重さ 7g 直径 26.5mm |
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(1999年まで発行され ていた旧500円硬貨) |
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重さ 7.2g 直径 26.5mm |
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重さ 4.8g 直径 22.6mm |
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重さ 4g 直径 21mm |
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重さ 4.5g 直径 23.5mm |
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重さ 3.75g 直径 22mm |
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アルミニウム 100% | 重さ 1g 直径 20mm |
奈良と鎌倉の大仏の比較
春と秋のシーズンには、鎌倉の大仏は観光客でいっぱいである。
つぎは、鎌倉の大仏と奈良の大仏とを比較してみます。
奈良の大仏 | 鎌倉の大仏 | |
創 建 年 | 745年 | 1252年 |
事業のかたち | 聖武天皇の発願による国家的事業 | 浄光僧侶の勧進による民間事業 |
技 術 | 大陸技術の導入による青銅鋳造 | わが国独自の技術による青銅鋳造 |
材料の成分 | 銅が93.15%含まれた青銅 | 錫と鉛の含有量が多い青銅(29%)で、当時さかんに輸入されていた宋の貨幣を使用 |
造 り 方 | 8回の積層法 | 7回の積層法 |
サ イ ズ | 高さ 14.21m 重さ 250t |
11.4m 110t |
アトムニューズ特別号 「疲れた時に読むアトムの硬い話」
黄鐘(おおじき)調の音色を求めて
祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。
だれもが一度は、あのゴォーンと低くこもった梵鐘の響きに、思わず壮厳な気持ちになった思い出があるのではないでしょうか。
そこには、日本古来の音律「十二律」でいう黄鐘調のあの音色を求めて、鐘師の大変な苦労があるようです。
梵鐘は鋳造によって造られますが、鳴るものであるだけにその製造は極めてむずかしいようです。一般に鋳造物には 気泡や巣がどうしても存在しますが、気泡は水素ガスや空中の酸素が、溶けた合金に吸収されて発生するものであり、巣とは、溶けた合金が収縮して 固まる時にできるものです。これは現代の技術をもってしても完全に除去することはできません。仏像などの場合、この気泡が内部にできれば構いま せんが、表面に大きくできてしまえば失敗であり壊してやり直しです。推定するところ、現在に残されている仏像の数倍の失敗作があったものと考えられます
梵鐘は鳴器であるため、この気泡や巣を嫌い、また、物が大きいため極めて高度な技術を必要としたようです。地金の質、配合、鐘の肉厚などが音色 に微妙に影響します。図に示すように、笠の部分が厚く、その下から乳の間にかけて薄く、また下にいって厚くなり、駒の爪で最大厚になっています。 この厚みの割合は7:5:3とか5:3:2とかいわれ、その割合に鋳造師の秘術があるようです。このように肉の厚さが音色にとって微妙であるた め、気泡や巣があっては意味がなくなります。昔、鐘師の重なる失敗を見かねたその娘が溶けた合金の中に身を投じて人身御供になったら良い鐘がや っとできたという伝説がありますが、そんなことからも、そのむずかしさがうかがわれます。
鐘は仏教の伝来とともに大陸から伝わったものですが、銘文をもつ日本製の鐘として現存する最古のものは、京都花園妙心寺 にある鐘で、697年である。我国における銅の発見が708年ですから、その10年前になります。朝鮮半島から原料を輸入し、技術者も半島からの 渡来人であったと思われますが、それにしても当時にしてはよくこんな傑作が造れたものだといわれています。
最近は、除夜の鐘くらいしか鐘の音を聴く機会もなくなりましたが鐘師の苦労も思い併せながら、あの黄鐘調の「無常の響き」をじっくりと聴いてみ るのもよいかもしれません。