歯車・後篇

歯車の話は、一般の人には少しマニアックに聞こえるかもしれませんが、歯車がなければ現在、社会は動きません。歯車はまさに「縁の下の力持ち」なのです。今回はヨーロッパで発展した『オートマタ』や日本独自に進化した『木製の歯車』をはじめ、さまざまな歯車を紹介します。

その昔、ヨーロッパで発展した金属の歯車


ヨーロッパではからくりが12〜19世紀に数多く作られ、その精密さによって脚光を浴びました。からくりの動力には、おもに大きなものでは水力が、小さなものではゼンマイが用いられました。動きの伝達には、当時から金属の歯車が数多く使われていました。
18世紀頃になると、当時の創作者たちは創作意欲の羽を広げて、精巧なからくりや人造人間的な作品(オートマタ)を作るまでになったのです。
なかでも『消化するアヒル』という作品は、アヒルが飲んだり食べたりしたものが、体内で消化・排泄されるという、伝説的なものでした。当時のヨーロッパでは教会の時計などにも、ゼンマイ仕掛けのからくりが取り入れられていました。しかし宗教界から「人間が、人間を造ろうとするとは何事か。人を創造できるのは神のみである」という批判が高まったのです。その後、ヨーロッパでは精密な人間を模したゼンマイ仕掛けからくりの文化は衰退していきましたが、産業革命の基礎を築いたのです。

日本で発展した木の歯車がとてもミラクルです


日本の木製歯車の文化は、江戸時代の鎖国が大きく影響しています。金属の歯車に関する情報は、鎖国の前に時計を通して日本に流入していましたが、数が少なく、いっぱんの人が目にすることは限られていました。鎖国により、手に入りづらくなった金属の代替案として、なんと木材を使うことにしたのです。
幸いなことに日本には豊富な種類の木材が自生しており、とくに硬い花梨などを使い、日本独自の木製の歯車文化の発展につながることになったのです。

出典:アトムニューズ211号 7-8ページ
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