素材を知る「亜鉛」

食べることのできる金属

紀元前4000年頃の古代ギリシャでは亜鉛と銅との合金である真鍮を作っていました。
日本では16世紀まで亜鉛は中国名で倭鉛と呼ばれ、亜鉛と呼ばれるようになったのは、さまざまなものがイラストと文章で記録されている『和漢三才図会わかんさんさいずえ』という江戸時代中期(1713年)の文献が最初といわれています。
この鉱物はさまざまな金属と合金にするのに適しているため幅広く使用され、また、亜鉛メッキにより鋼材に亜鉛皮膜をつくることで鋼材を錆から守るという優れた特徴を持ち合わせています。そのほか亜鉛粉末をペンキの中に混ぜて鉄の表面に塗装するジンクリッチ塗装材にしたり、ダイカスト用亜鉛合金(亜鉛にアルミニウムと銅をまぜた合金)は強度があって流動性も備えているため、超合金の玩具やドアノブ、電化製品、自動車などの材料として使われています。
亜鉛は土の中にも含まれており、生物にとって生育に必要なタンパク質の合成や骨の発育に欠かせないミネラルです。新陳代謝や免疫力を高めたり、タンパク質やDNA、RNAの合成にも関係しています。このほかにも亜鉛にはデトックス効果があり、有害物質を体内から排泄したり毒性を抑えたりすることができます。体内で亜鉛が欠乏すると記憶力低下や味覚障害が起こってしまいます。一方で工業用に作られた亜鉛や高濃度の亜鉛は人体に有害です。

出典:アトムニューズ196号 8ページ
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