磁石が持つ磁力

磁力は目には見えませんが、確かに存在しています。身近なものでは冷蔵庫のドアや、そのドアにメモを付けるマグネットも磁力を利用しています。また、砂場で、U字型の磁石を砂にかざしてみると、磁石の両端に黒い砂(砂鉄)が付いてくることを体験したことがあると思います。

鉄の中には、磁石になる要素がすでに含まれている

磁力が一番大きな影響を及ぼすのは、地球かもしれません。北極の近くにあるS極と南極の近くにあるN極が、磁場により宇宙からの有害な宇宙線などを大幅に防いでくれていることは広く知られています。また自然界では、渡り鳥が地球の磁場を利用して独自の体内コンパスを利用しながら目的地までたどり着くことがわかっています。私たちも山で遭難したときなどに、地球の磁場に反応する方位磁石があればその危機から脱することができます。
では、私たちが使っている磁石はどういう構造なのでしょうか?地球上の鉄鉱石はもともと、磁石となる性質を持ち合わせています(*)。その磁石は、N極とS極がバラバラに存在しているの、ふだん鉄どうしがくっ付くことはありません。けれど、鉄に磁気を帯びた磁石を近づけると、鉄内部の分子磁石のN極とS極が磁気誘導されて整列し、別の極どうしが引き合い、くっ付くというわけです。その逆に、同じ極どうしでは反発し合い離れます。(* 鉄の原子の真ん中には原子核があり、絶えずその周りを電子が回り続け、磁力も生み出しています。)
磁石を構造などで生産する場合、よく使われるフェライト磁石では、酸化鉄などを調合して溶鉱炉で温め固めます。それを粉末になるまで細かく砕き、磁力の効いた金型に入れ、N極とS極の方向を決めて成形。その後焼き固めると「焼結」され、強力な磁場を発生するコイルの中を通すと、磁化されて密度の濃い磁石が完成します。また、近年多く見られるようになった強力な「ネオジム磁石」の場合、ネオジムという金属元素と鉄を合金にすることにより、より強力な磁気を帯びたネオジム磁石を作ることができます。

身近なところに使われている磁力

磁力を用いた道具や機械を家の中で探してみたら、きりがないほど多くのものに使われていることがわかります。電子レンジは部品にフェライト磁石が使われていますし、冷蔵庫のドア、あるいは携帯電話の呼び出し時に振動するバイブレーターにも磁石が使われています。リビングを見渡せば、パソコンのハードディスク、スピーカー、電動鉛筆削りなどなど。外出時、電車に乗る際に手にする切符の裏面にも、黒く塗られた磁気素材が使われています。会社ではコピー機のトナーを吸着される部品にフェライト磁石が使われ、また病院に行けばMRIのような磁気と電波を使った診察機器があります。磁力は私たちの暮らしの中で大きく役立っていることがわかります。

超伝導とリニアモーターカー

現在、日本で運用が計画されているリニアモーターカーはm時速603kmの試験走行に成功しています。ではそもそもリニアモーターカーは、どのようなしくみで走るのでしょうか?ある物質を一定温度以下に下げると、電気抵抗がゼロになることを「超伝導」と呼びます。そこへ電気を流すと電気抵抗がないので電流がコイルの中を永久的に流れ続け、それと同時に強力な磁場を発生させます。車両には超伝導磁石が搭載されているので、ガイドウェイ(走る道)に装着された地上コイルと磁気相互力により浮上し、走行します。

出典:アトムニューズ212号 7-8ページ
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