歯車・前篇

今では少なくなりましたが、ひと昔前にはどこの家にも客間に大きな柱時計が、掛けられていたものです。その柱時計はチックタックと時を刻み一定の時間がくるとボーンッ、ボーンッと時を知らせてくれます。その役割を担っているのが、たくさんの歯車なのです。

歯車は、いつゴリからあるの?


歯車の始まりは紀元前、古代ギリシャの時代です。この当時すでにアリストテレスによって、青銅や鉄を削って作った歯車で回転運動の伝達をおこなっていたと記録されています。回転数の違う別の軸に回転を伝達する方法としてはベルトの利用などもありますが、正確に回転を伝達させるためには、やはり歯車がもっとも優れていました。この技術はその後エジプトやローマで発展し、やがて歯車は時計や天文計算機などの動きを司る部品となりました。

どんなものに歯車が使われているのでしょうか?

私たちの生活の中で、どんなものに歯車が使われているのでしょうか?
たとえば、ラジコンやコーヒーミル、ハンドミキサー、手回し発電ライト、時計、三脚の丸ラックの昇降機構、オルゴール、自動車内部機構、顕微鏡、昔の造船所で船を引き揚げるウィンチ、また工場での組み立て工作用機械などにも歯車が使われており、歯車の利用場所を取り上げるときりがありません。

歯車の素材は?

歯車の素材は、動かすものの重量や使われる環境により変わります。金属製の歯車は、おもに重量のあるものを動かすときに使用されます。産業用機械や船の減速機などにも歯車は使われていますし、自動車のエンジンの中にも数多く使われています。
そのほかにも、特殊プラスチックなど、さまざまな素材が使われています。その進化はとどまることがなく、現在では、医学の世界でも小さな歯車がカテーテルなどに活用されています。さらに、最先端の分野では分子の歯車も考案され、新たな使い方が模索されています。

時計の歯車はどのように動いているのか

時計には精密な歯車が、気が遠くなるくらい数多く使われています。金属の歯車の内側は切り抜かれており、ゼンマイへの荷重を軽減し、組み立てるときの利便性も高めています。
そしてその歯車の一つひとつが、それぞれに役割を果たしているわけですが、ここでは時計の中の基本的な歯車だけを解説します。
ゼンマイ式の腕時計の場合、リューズを巻くと香箱車の中のゼンマイが強く巻き締められ、それがほどけようとするときに発生する力が、香箱車(ゼンマイが入っている)を回します。
円形の香箱車の外周に歯車の刻みがあり、ゼンマイの力が、噛み合っている2番車(分針+時計)の歯車に伝わり、そこから3番車→4番車(秒針)→ガンギ車を回し、最後に脱進機のテンプから突起したアンクルによって。ゼンマイがゆっくり、かつ一定した速度でほどけているように制御しているのです。

田中久重(からくり儀右衛門)の万年時計


江戸時代後期〜明治初期に活躍し、田中製造所(現・東芝、明治初期の重電部門)を創業した人物が田中久重。彼が製作した『万年時計』にも多くの歯車が使われています。

出典:アトムニューズ210号 7-8ページ
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