ぴょんぴょん跳ねるだけじゃない「ばね」

ばねは、「エコな縁の下の力持ち」といってもいいかもしれません。
素材の持つ弾性・反発力を利用しながら、私たちの生活の中の目立たないところで活躍してくれているのです。

ばねって何?

物体には加えた力が除かれると元の形に戻ろうとする、弾性と呼ばれる性質があります。ばねはこの性質を利用したものです。ばねには、復元力、エネルギーの蓄積と放出、固有の振動数、という3つの特性があります。
弓で例えると弓の弦(つる)を引く強い力が弓幹(ゆがら)と弦に加わり、それを解放したときに、矢はその力を利用して放たれます。これがエネルギーの蓄積と復元力です。
またゼンマイも弾性を利用しています。手巻き時計やゼンマイ仕掛けの玩具で、そのネジを巻くことによりエネルギーが蓄積されます。その蓄積されたエネルギーが解放されることにより、時計や玩具が動くのです。

コイルばねは、どのようにしてできるの?

ばねの製造工程では、材料となる金属線を高温加熱した段階で円筒形の鉄の棒に巻き成形します(コイリング)。この時、金属への焼き入れ温度は900〜1000度で、時間は9分ほどです。金属の種類により工程は若干違ってきますが、熱した後に油の中に入れ冷まします。その後、焼き戻しとして400〜500度で加熱することにより金属に強さと粘りが得られます。
次にショットピーニングをおこないます。これは、ばねの表面に極小の鋼球を打ちつけることにより、ばねの表面に硬化と圧縮残留対応を与え寿命を延ばすことができるのです。次のセッチングという工程では、ばねに最大の荷重をかけ塑性変形を行うことによりばねのへたりを防止します。最後に、ばねにメッキや塗装の処理をして防食と装飾をし、弾力検査などをおこなって完成します。

その他の弾性や反発力を利用した素材

日本では古く唐竹という自然素材が使われてきました。たとえば弓は竹の反発力を利用して矢を遠くに飛ばすことができます。また、全国各地で竹の反発力を利用した竹細工の郷土玩具が数多く見られます。
最近の話題では、カーボンプレートをミッドソールに組み込んだランニングシューズがあります。ミッドソールに反発力を持たせることにより、走者の推進力に大きな効果を発揮しています。そのほかにも近年では金属の代わりに非磁性の樹脂(ポリカーボネートやポリアセタール、ピークなど)でできたばねが使われるようにもなり、ばねも適材適所で使用され、その素材も変化していく時代になっていくことでしょう。

出典:アトムニューズ208号 7-8ページ
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