忘れられた存在「天井」を考える

天井は本来、屋根裏を隠す役割と、それに加えて家の中を保温する役割を持っています。現在、一般的な家庭の天井では、板張りか天井用のクロスが張られていることが多いようですが、寝る時にしか目にすることのない、天井のことを少し考えてみました。

縄文時代の竪穴式住居の場合

天井はなく、茅などの植物を乾燥させ、束にして積み重ねて屋根としました。
内側では、骨組がそのままむき出しとなっていました。

戦国時代の武家屋敷には杉や檜が使われていました。

天井に使われる板には、杉や檜などの軽い板が使われました。武家屋敷に忍び込む忍者も天井裏の梁を歩き、軽い天井板に乗ることはありませんでした。

古今東西最高峰の天井は?

バチカン市国にあるシスティーナ礼拝堂の天井画『アダムの創造』は、ミケランジェロにより描かれたもの。清書の世界観が表現されており、天井画の最高傑作とも言われています。
京都にある相国寺は禅宗の寺で、天井には鳴き龍とも呼ばれる天井画、狩野光信の『蟠龍図ばんりゅうず』があります。
天井という存在を竜が舞い降りる姿で演出し、また手を打ち鳴らすと音が反響して龍の鳴き声に聞こえるといわれています。

天井の私的な経験

私は少年時代、田舎の古い一軒家に住んでいました。その家の天井には、新聞紙や広告が貼られた天井、また木目が露出した天井などがあり、子どもの目には、その天井がまるでビジュアルなワンダーランドに見えたのです。それは今でも情報の宝庫として、私の脳裏に残っています。

天井の基本

日本では家屋の天井は建築基準法施行令(第21条)で平均2.1m以上と定められています。
天井は大まかに分けると、直天井と吊り天井にわかれます。天井の形状から分けると、船底天井、竿縁さおぶち天井、ごう天井、勾配天井、掛け込み天井。近年では、屋根の断熱材の進歩もあり、従来の天井は設けず直天井にする家が増えているように思います。

天井の未来予想図

天井を、白い空間のまま保つのも良いかも知れませんが、もしも天井をモニターにし、自由に好きな画像を映し出せたら、どんなに楽しいでしょう。また、天井を開け放ち、夜空を見上げる天井もまた楽しいかもしれませんね。

出典:アトムニューズ197号 7-8ページ
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