春に桜の花が咲くと多くの人が花見を楽しみます。日本人にとって桜は特別な存在かもしれません。園芸種のソメイヨシノは日本各地で目にすることができますが、成長が早く空洞ができやすいので木材として利用されることは多くありません。有用材の桜といえば、野生種のヤマザクラ(ホンザクラ)を指しています。その肌目は緻密で毛羽立ちがすくなく丈夫なため、建材や家具、楽器や版木、器の木地などにも使われています。特に美しいさざ波模様が出ている板は珍重され、高値で取り引きされることもあります。また、樺=通称:カバザクラという木がありますが、植物学的には桜ではありません。木質的によく似ているので桜の代用として使われて、ヤマザクラより安価で流通しています。

監修 石塚典男(木香家)

出典:アトムニューズ215号 8ページ
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