桐(キリ)

桐は北海道南部から鹿児島に至るまで生育しています。色白で美しい木肌の桐は、日本の樹木の中で最も軽く、狂いや割れも少ない木材です。また、熱伝導率が極めて低く発火しにくいうえ、吸水性に優れています。その特徴から、たんす以外にも刀剣、貴重品を収納する桐箱や、琴、琵琶などの楽器に至るまで幅広く使用され、日本ならではの桐文化が発達しました。桐は成長が早く、15〜20年で成木となり家具材として使えるように育ちますが、桐を家具材として用いるのは、日本だけだといわれています。日本は多湿で寒暖の差が激しく、木造住宅は火災の心配もあります。この国の気候風土や風習を考えると、桐が生活用品の材として利用されていたことも納得できるのです。

監修 石塚典男(木香家)

出典:アトムニューズ209号 8ページ
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